和洋中にデザートまで。
一器多用に活躍する村上雄一さんの「なます皿」

美濃焼の産地である岐阜県土岐市で作陶する村上雄一さん。

前回の記事では、村上さんのこだわりが詰まった美しい丼「マカイ」をご紹介しました。

>>「マカイ」の記事はこちら

 

マカイの魅力のひとつが、清々しい美しさを持つ釉薬「青磁」・「米色(べいしょく)青磁」。
村上さんのうつわには、この2つの釉薬を使った名シリーズがもうひとつあります。

そのうつわは「なます皿」。

あらゆるお料理と相性がよく、マカイに勝るとも劣らない多様な活躍を見せてくれるうつわです。

本記事では、なます皿の魅力を村上さんに教えていただきました。

村上さんが提案する“最高”のなます皿

なます皿とは、その名の通り「なます」を盛るのに使われてきたうつわのこと。
なますなど汁気のある料理が盛りやすいよう深さがあり、縁に立ち上がりが少しあるのが特徴です。
5寸前後のサイズが多いとされています。

村上さんがなます皿の制作に取り組み始めたのは10年以上前のこと。
当初は粉引や三島手のなます皿を作りましたが、やがて現在のような磁器のなます皿にたどり着きました。

「磁器のなます皿なら、今のこの形が最高だと自信をもっておすすめできます」とにっこり笑う村上さん。
ある時出会った中国・北宋時代の大鉢の形にひかれ、サイズを小さくして写しを作ったのが始まりだと話します。
造形の美しさのエッセンスはそのままに、今の日常の食卓に溶け込むようにブラッシュアップを重ねてきました。

使いやすくて目にも美しい

無駄のないすっきりとしたたたずまいには、さまざまな機能が隠されています。 

例えば、自然になめらかに膨らんだ胴の部分。見た目の美しさはもちろんのこと、スプーンやお箸がちょうどよく引っかかり、汁気のある料理でも最後のひとすくいまできれいに食することができます。

また、膨らみの上の口縁がほんの少し外にせり出しているのも、村上さんの計算あってこそ。口へのあたりがよく、お出汁やスープを姿よく味わい尽くせます。

汁気のある食材や、うつわとスプーンの相性も良いなます皿はお子様用の食器としても重宝します。

村上さんいわく「底が平らなのも、おすすめポイントのひとつなんですよ」。見込みにカーブがある鉢と異なり、底を平らにすることによって盛り付けのしやすさがぐっと上がります。

どんなお料理も美しく映える

カーブのある変則的なフォルムでありながら重ねても美しく、日常で使うことの意味がとことん追求されています。電子レンジ・食洗機の使用も可能です。

村上さんの考える理想のなます皿が実現したのは、前回ご紹介したマカイ同様に、美濃の職人さんである瀧さんの協力があってこそ。

「ろくろで一つひとつこの形を手作りしたら、時間もかかるし何より難しい。技術力の高い職人さんとともに型を用いて制作したからこそ、この理想的な形を実現できたのだと思います」

もちろん、美しいのは形だけではありません。青磁・米色青磁の力によって、うつわ単体としても美しさはもちろん、さまざまなうつわや料理との調和が生まれています。

こうして細部までこだわり尽くされたなます皿。どんなお料理がおすすめか、村上さんに尋ねました。

心地よさに毎日使いたくなる

「まず挙げたいのが、鍋料理の取り鉢。寒くなってきたこの頃、我が家では週3で登場しているかもしれません。お出汁もおいしく飲み干せますしね。

汁気のあるものなら、スープカレーもぴったりです。ひとつにカレー、もうひとつにごはんを盛って使っています。朝食のシリアルにもいいですね。ひっかかりがあるのですくいやすいですよ」

あえものやおひたし、ナムルにポテトサラダはもちろんのこと、スペアリブのような肉料理もよく映えます。果物やアイス、かき氷など、デザートにもぴったり。料理のジャンル・色味を問わずに受け入れてくれる懐の深さから、毎日毎食使いたくなるうつわです。

次々と溢れる“作りたいうつわ”

作陶において、日常における美しさや時を経ても残り続ける価値を追求する村上さん。
最後に、今後作りたいうつわについて尋ねたところ「やりたいことが多くて」と笑います。

ネジネジと呼んでいる編み込みの技法も深めたいし、いずれは信楽もやりたい。裏山に薪窯を作る計画も進行中で、自分で整地を進めているところなんですよ」

「私なりの民藝を貫きます!シンプルデザインだからこそ時代を跨げると信じて作り続けます。人手不足、原料枯渇、素地屋が無くなるなど、作り続けるにはこれからいろんな壁があると思います。それでもニーチェアのように作り続けようと心に決めました!この器はもうデザイン変えません」

と学びのために集めた沢山の資料を手にしながら、弾むように語ってくださいました。

実は、村上さん×雨晴オリジナルのうつわのプロジェクトも企画中。
お伝えできることが決まったらご案内いたしますので、ぜひお楽しみにお待ちください。

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