いつものごはんがごちそうになる魔法の丼。
村上雄一さんの「マカイ」
こちらの「マカイ」を作ったのは、岐阜県で作陶する村上雄一さん。
マカイに込められた思いやおすすめの使い方をオンラインショップスタッフの七倉が伺いました。
フォルムの美しさに息を呑む。村上さん流「マカイ」
現在、美濃焼の産地として知られる岐阜県土岐市に工房を構える村上さんですが、陶芸の修業を始めたのは沖縄の地でした。マカイと出会ったのも沖縄でのことです。
「親方*の作るマカイの形がとても好きでした」
*山田真萬(やまだ・しんまん)さん。沖縄を代表する陶芸家の一人。
マカイとは沖縄の方言で「碗」のこと。ご飯にも汁物にも使われる、沖縄の日常的なうつわです。重ねられるようにやや反ったV字のフォルムをしています。伝統的なマカイでは、お碗の見込みに“蛇の目”と呼ばれる釉薬がかかっていない部分があり、外側に絵付けが施されているものが多くあります。
一方、村上さんの作るマカイは“ザ・シンプル”。絵付けも一切なく、すっきりとしたたたずまいが目を引きます。
盛るだけでお料理が美しくおいしくなる
一見、簡素にも見える村上さんのマカイですが、お料理を盛ったとたんにその真価が発揮されます。
ちょっとした麺類やごはんもの、ざっくり作ったサラダやあえものなど、肩ひじ張らない普段の食事がなんとも美しくおいしそうに見えるのです。
「一番大きいサイズは、サラダやビビンバにおすすめですよ。深さがあるのであえやすいです」
こだわり尽くした「形」と「色」
「我が家で日常使う器は漆器やガラスもたくさん使います。シンプルなものが好みです。
さまざまな素材の器に陶磁器を合わせるので自然と控えめでシンプルな造形の器作りになるのだと思います」
磁器ならではのシャープな美しさがありながら、使う者に安心感をもたらす安定感を兼ね備えています。考え抜かれたフォルムはスタッキングした姿すら美しく、薄手で軽くて持ちやすいのも魅力です。
形の美しさもさることながら、色の美しさもまた、お料理が映える秘密のひとつです。現在、村上さんのマカイは「青磁」と「米色(べいしょく)青磁」の2色があります。
「青磁の持つ清潔感は、日々の食卓になじむと感じています。釉薬に鉄を足さず、灰の含む鉄分のみを用いることによって、自然で心地よい色に仕上がっているのではないでしょうか」
宋の時代を思わせる米色青磁もまた清々しく、どちらも透き通るような透明感が食卓をぱっと明るく見せてくれます。
あらゆるお料理やシーンに対応できるようにと、サイズは3種類。
一番大きいサイズは麺類や汁物、サラダなどの盛り鉢代わりに。中サイズはごはんものに、小サイズはお茶碗としても活躍してくれます。
「ろくろの手挽きはひとつひとつ個体差が現れるロマンがありますが磁土でこのサイズの成形は困難で底裂れが生じやすい。削る土の量も多いし歩留まりが悪すぎる。
私自身マカイは大好きな器で展示会では評判が良いので数揃えたいけれど作れないジレンマがありました。
そこで昔からプライベートでも付き合いのある動力素地屋の瀧さんに相談したところ快く受けてくださることになりました。
形を作ってもらうところだけお願いして、縁の仕上げ、高台の削りは自分の工房ですることにより細部まで気の通ったマカイに仕上げることができました。
美濃にいるからこその連携プレイです!
実際仕上がってみると、形が揃っているのでスタッキングが良く、歪みが少なく、とても丈夫です。
ろくろ成形は手段であり、目的のためにはさまざまな方法があると再認識することができました。
そして日常食器とは何か、いい器とは何かを改めて考えるきっかけになりました。
1人の人間が作る手作りだから良いのか、数が作れると良い器ではないのか、
そういった考えにひとつ答えを示せた気がします。
100年後割れる器を作らなくなった世の中でも、未来の人に良い仕事してるね!
といってもらえる器ができたかな」
左・村上さんの工房に並べられているのは、瀧さんより成型されたマカイの生地。素焼きをしたのち、釉薬をかけてもう一度窯に入れる。
右・瀧さんの工房には成型に使われるコテが多数並ぶ。もちろんマカイ専用のコテもある。
村上さんのマカイがあれば、毎日の料理や食事がもっと楽しくなること間違いなしです。皆さんもぜひお楽しみください。
さて、いくつもの名作を生み出している村上さん。
マカイと同じ青磁・米色青磁を使ったうつわでもうひとつ、毎日使いたくなるうつわ「なます皿」があります。
次回の記事では、なます皿について詳しくお伝えします。
記事は11月30日(水)ごろ公開予定です。どうぞお楽しみに!